馬場智行写真展「ACRYL」&「Suburbian Tapestry」

開催者

undō

馬場智行写真展を開催いたします。
本展は、馬場が昨年上梓した写真集「ACRYL」と新作である「Suburbian Tapestry」の二つの展示を、それぞれ二週間ずつ行うものです。
馬場は、自身が子どもを持って以来、この世界が本当にはどういうところで、どうなっていくのかに興味を持つようになったと言います。そして、見知った事物に目を留め、その本質について考え、その答えや疑問を写真によって提示しようとしてきました。社会的な視点から人間に向かい、「人間が生きるということ」を、あぶりだそうとしているとも言えるでしょう。
水族館の生物を暗闇の中から浮かび上がるように撮影した「ACRYL」、建て売り住宅の中から見える景色を記録した「Suburbian Tapestry」。二つの展示により、馬場の提示する人間への眼差しが、立体的に浮かび上がります。


「ACRYL」
人類の科学は、様々な問題を、不可能を可能にすることによって解消してきた。私たちの生活は、自らが作り出してきた様々な技術の恩恵を受けている。それらの一部には体外受精やクローンという、生命の存在意義に関わる技術がある。文化とあくなき向上心が人間の神髄と言えるかもしれない。
しかし、それによってもたらされるものは、人間を生物たらしめていることを奪うかもしれない。
本作は、水族館の生物を人間の行く末、あるいは現在の姿を暗示するモチーフとしている。水族館の生物と海に生きる同生物との一番の違いは、生存競争に身を置かないということだろう。そのことが両者の生き方を大きく分けている。水族館には人口の波や岩、そして人間がある。これらの生き物は、人間の生み出した技術に囲まれ、育まれている。姿形は海に生きるそれと何ら変わりないが、別の存在に成りつつあるのかもしれない。 数十センチのアクリル壁一枚を隔てた場所に存在するその姿は、あたかも自然の摂理から逸脱した人間のようである。

「Suburbian Tapestry」
本作は、郊外の住宅を撮影したものである。サバブと呼ばれる地域に多く見られる、同じ外観の家々が立ち並ぶ風景、その街並を奇妙だと感じたことが着想のきっかけだった。 建売住宅を見て、それが個人の所有するものだと思わなかった。マンションの様な性格もおそらく持ち合わせているのだろう。隣と同じ見た目の家が連なるその様は、まさに共同体といえる。つまり、そこにある家は個人の空間でありながら、どこか外の社会と常に空間的に断たれていないことを感じる家なのだ。これらのことが、居住者に与える影響についてある考えを起こさせた。それは、そこで育まれた子どもは我々の持たない新たな感覚を備える代りに、自分たちが持っている何かを失っているだろう、というものである。
郊外の住宅はしばしば否定的な言葉で語られてきたが、その成り立ちにはむしろ時代の需要に従った必然性が見える。建売住宅の街はサバブにおける、その現在(最新)の姿であると言える。 本作は、建売住宅の街を家内に入り込み内側から撮影したものである。居住者の視点の一部を借り、そこで生きる手触りをより感じるために、建売住宅のその様を窓越しに収めたものである。

スケジュール

2/6(金)〜2/17(火)&2/20(金)〜3/3(火)

HP

http://minowa-undo.tumblr.com/post/109206337687/acryl-suburbian-tapestry

SNS

アクセス

荒川区東日暮里1-5-9


  • このエントリーをはてなブックマークに追加